003 オジナガの魔女

−怒りに触れた人々が、次々と怪死を遂げる−



 魔女狩りは、中世ヨーロッパで巻き起こった一種の集団ヒステリーであるが、これは20世紀の魔女狩りの話である。
 1955年のアメリカ南部、テキサス州オジナガの小さな村で事件は起こった。羊飼いの少年が村はずれの廃屋の前で、5人の娘が焚き火を囲んで踊っている 野を目撃。娘たちは全裸で、ジョセフィン・アリストという女性を中心に何かに憑かれたように踊り狂っていた。
 以来、村ではジョセフィンは魔女だ。娘たちを集めて、悪魔の儀式をしているという噂が広まった。その噂を聞きつけ一人の男が村にやってきた。 たちの悪いポン引きで、そんな女なら村から連れ去っても誰も文句は無いだろうと考えたのだ。
 ところが、ジョセフィンはそんな男についていくような女ではない。男を散々にののしると、男は逆上してナイフで切りつけた。その男に対して ジョセフィンは「お前は明日の朝までに死ぬよ」と言い放った。
 そして、彼女の言葉通り男は連行された留置所で、翌朝冷たくなって発見されたのだ。
 村は大騒ぎとなった。「ジョセフィンは魔女だ。間違いない」と村人は口々に言い始め暴動寸前となった。危険を察知した警察はジョセフィンを 留置所に押し込め村人から引き離そうとしたが、興奮した村人たちは大勢で留置所に押しかけジョセフィンを引きずり出し、柱にくくりつけ 生きたまま火あぶりにしてしまった。
 ジョセフィンが魔女であったかは分からない。だが、率先して火あぶりに加担した何人かは、その後すぐに不審な死を遂げたという。




002 怪奇の扉 004
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