015 ウインチェスターミステリーハウス

−36年間、増築をし続けた家−



 アメリカのカリフォルニア州サンノゼという街にはウィンチェスターミステリーハウス と呼ばれる建物がある。この建物は「一度迷い込んだら二度と出られない」と言われ、 カリフォルニア州の歴史的重要建造物に指定されている。

 この建物はもともと、サラ・ウィンチェスターと言う夫人が所有していた個人宅である。 敷地面積は東京ドームの約半分の24000平方メートル。それでも今は一時期に比べると狭くなっており、 最も広いときは65万平方メートルもあった。内部には160もの部屋があり、窓ガラスは1万枚も使われている。 だが、屋敷の中には理解不能、意味不明な物がたくさんある。
 たとえば、開けると壁になっているドアや上下がさかさまになっている柱、天井に突き当たってしまう 階段、天窓が床にある部屋、全長3キロメートルもある曲がりくねった廊下などがあり、夫人自身も 地図を持って歩いたというほどの広く複雑な屋敷である。

 ウィンチェスター夫人がこのような複雑な屋敷を作ったのには理由がある。ウィンチェスター夫人は 18世紀にウィンチェスター銃の販売で巨万の富を築いたウィリアム・ワート・ウィンチェスターの妻である。
 事の発端は、ウィンチェスター夫婦の子供が生後間もなく死んでしまい、その15年後に夫も死んでしまった事にある。 度重なる不幸に悩んだ夫人がある霊媒師に相談したところ、「ウィンチェスター銃で殺された人々の霊が復讐をしている。 アメリカ西部に行き、家を建てなさい。建設の手を休めずに建て続けていれば生き長らえる」と告げたという。
 それを鵜呑みにした夫人は、アメリカ西部のカリフォルニアに土地を買い、夫人がなくなる1992年9月までの 38年間24時間365日、休むことなく増築に次ぐ増築を繰り返していた。意味不明な内装は、この仕掛けによって 悪霊を惑わせ、追い払えると信じた夫人の設計によるものである。つまり、悪霊払いのために延々に増築が 続けられていたのである。
 そのおかげかどうかはわからないが、夫人は80歳まで生きて天寿を全うした。彼女の死によって建設は 中断され、未完成の地下室や宴会場がそのまま残っている。


 




014 怪奇の扉
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