014 長崎ストーカー殺人事件 筒井郷太

(被害者・関係者は仮名、敬称一部略)



事件概要
 2011年12月16日、長崎県西海(さいかい)市でHさん(77歳)とMさん(56歳)が殺害され、 自宅敷地内のワゴン車の荷台に血まみれで発見された。翌17日、長崎県警は三重県桑名市の無職・筒井郷太(27歳)を殺人、 住居侵入の容疑で逮捕した。 筒井は、Mさんの三女の元交際相手で交際を巡るトラブルから2人を殺害した。

事件までの経緯
 三女と筒井はネットを通じて知り合い2011年2月下旬頃から交際に至った。当時無職であった筒井は三女が一人暮らしをしていた千葉県の 家に居座り日常的に暴力を繰り返していた。三女は千葉県内のスーパーに勤めていたが、帰宅時間が少し遅れただけでも 筒井から暴力を受け身体中がアザだらけになり、頭から血が出るくらい叩かれ、熱が出ても病院へ行かせてもらえなかったほどだった。

 2011年10月29日に三女の父親から相談をうけた長崎県警は、千葉県警に通報。 通報を受けた千葉県警は10月30日に筒井に事情聴取や警告を行っていたが、筒井は三女から引き離された事を機に、ストーカー行為を行い、三女や三女の知人に 「居場所を教えなければ殺す」「家族を殺す」等の脅迫メールを送っていた。

 千葉県警は12月9日に筒井を再度出頭させ警告を行い、筒井は「自分からは連絡を取らない」と応じ、実家のある三重県に 帰った。
 その後、12月12日に三女は、9月と10月に自宅や千葉県習志野市内の路上で顔を殴られるなど怪我を受けたとして、千葉県警習志野署に傷害の被害届を提出している。 千葉県警は同日付で被害届を受理し、12月14日に捜査を開始したが、同日筒井は自宅で父親の顔面を殴り行方不明となった。筒井の父親はその後、東京都内で三女の父親とと面会。 「息子が自分の顔を殴り、金を持って姿を消した。気を付けてほしい」と伝えていた。


事件
 2011年12月16日、午後6時頃、筒井は長崎県の三女の実家の祖母宅に窓ガラスを割って侵入し祖母のHさんを包丁で複数回刺して 殺害した。その後、午後6時20分頃、母親Mさんを包丁で11回刺し殺害した。午後9時前にMさんの次男が帰宅し、 居間のガラスが割れれていた為、東京に住む父親に連絡。家族の姿が見えない為、次男は近所に住む親類男性と 家族を探し午後9時10分頃、自宅敷地内のワゴン車の荷台に祖母と母親が倒れているのを発見。ワゴン車は施錠され、 車内や敷地内には多数の血痕が残されていた。
 2011年12月17日、長崎県警は筒井を長崎市内のホテルで見つけ任意同行を求め、殺人、住居侵入で逮捕。逮捕当時、筒井は被害女性の財布2つと 包丁2本所持しており、この包丁からは死亡した2人の血液が検出された。また、筒井の着ていた衣服にも被害女性の血痕が付いていた。


無実を主張
 逮捕直後、筒井は「弁解することはない」としていたが、12年1〜4月の鑑定留置で「人格障害」と診断され、長崎地検に刑事責任能力があると起訴されてからは容疑を否認。 「長崎には行ったが女性宅には行っていない」「他に犯人がいる」「検察、警察がでっち上げたストーリー」等と主張した120枚に及ぶ手紙をマスコミに送付している。


防げた可能性
 事件発生前の2011年12月6日、三女の父親は習志野署に三女の暴行事件について相談したが、その際、刑事課は別事件の対応に忙しい事を理由に被害届の提出を1週間待つようにと伝えられた。しかし、その2日後の 12月8日から事件を担当する生活安全課の課長や刑事課の担当者を含む10人余りが、署内のレクリエーションで北海道の函館市に2泊3日の旅行に行っていた。
 結果的に、12月12日に被害届の提出、受理となり、事件を防ぐ事が出来なかった。相談を受けた12月6日に被害届を受理していれば事件を防ぐことができた可能性もある。




裁判
初公判(長崎地裁) 2013年5月14日 
 筒井は住居侵入、殺人、窃盗、傷害、脅迫の罪全てで無罪を主張全面無罪を主張。弁護側は起訴内容を否認したうえで「刑事責任能力の有無、程度についても争う」と述べた。

第2回公判 2013年5月15日 

第3回公判 2013年5月16日 

第4回公判 2013年5月17日 
 筒井からストーカー被害を訴えていた女性が「家族を殺すと言われていたので、死ぬことも逃げることもできなかった」と涙声で証言した。また、鉄アレイで殴られたり、手錠を掛けられ正座をさせられ蹴られるなどの激しい暴行や、「大型商業施設の雑貨売り場で男性客の接客をする時は、携帯電話を通話状態のままにさせられていた」と束縛の状況を明らかにした。

第5回公判 2013年5月20日 
 筒井によるストーカー被害を訴えていた女性の姉2人が女性救出の様子などを証言。「部屋は物が散乱し、壁に血が飛んでいた。ひどい暴力があったと確信した」「私も被告にいつか殺されると覚悟し遺書を持ち歩いた」と語った。

第6回公判 2013年5月21日 

第7回公判 2013年5月23日 
 検察側が「女性を連れ戻した家族が邪魔で2人を刺殺した」とする筒井の捜査段階の自白調書を読み上げた。裁判所は捜査段階の自白調書を証拠採用。

第8回公判 2013年5月24日 
 弁護側の質問に対し、筒井は「起訴されたようなことはしていない」と重ねて全面無罪を訴えた。

第9回公判 2013年5月27日 
 筒井は検察側の質問に対し、被害者とDNA型が一致する血痕が付着していた衣服などの証拠は警察が偽造したものだと主張した。

第10回公判 2013年5月28日 
 筒井の精神鑑定を担当した精神科医が出廷。医師は、鑑定中のやりとりなどを明かし「善悪の判別能力や行動制御能力に影響を及ぼすとは考えられない非社会性パーソナリティー障害」と証言。  医師は筒井の生い立ちを語る中で「幼少期から他の児童にかみついたり、家族に暴力を振るっていた」「依存性が強く、他罰的な性格だ」などと語った。24日と27日にあった被告人質問の様子も傍聴し、自己を劇化する「演技性パーソナリティー障害」の傾向も見られるとしたうえで「被告の供述は虚言と言わざるを得ない」と述べた。

第11回公判 2013年6月3日 
 検察側は、「今もストーカー行為の相手や家族を殺す事件が後を絶たない。命をもって償うことで世の中に断固としたメッセージを送るべきだ」として死刑を求刑した。  筒井は最終意見陳述で「僕は殺人などをしていません。裁判員や裁判官の方は先入観や思い込みを持たないでほしい」と無実を訴えた。

第12回公判 2013年6月14日 判決:死刑
 判決が言い渡された瞬間、筒井は血の気が引いたような顔色をしていが、弁護士の方を向いて、笑みを浮かべながら法廷をあとにし、即日控訴した。
 一方で筒井は、14日午前にNNNに以下の内容の手紙を送付している。
「もうどうしようもなくなっちゃったから死にたい。なんで僕が殺したことになるの?くやしい、悲しい。つらい、涙が出る。もう生きていたくない死刑でいい。何を言っても伝わらない世の中なら伝えたくもない。もう嫌になってきました」




控訴審(福岡高裁) 2014年6月24日 判決:死刑








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