020 大阪府警官女性殺害殺人事件 水内貴士

(被害者・関係者は仮名、敬称一部略)



事件概要
 2015年1月25日大阪市東住吉区のマンションで住人の社会福祉士、Sさん(23)が遺体で発見された。 大阪府警が同月26日、殺人容疑で逮捕したのは、Sさんの交際相手で、自らの組織に所属する阿倍野署地域課の巡査長、水内貴士容疑者(26) だった。

事件
 2015年1月25日大阪市東住吉区のマンションで住人の社会福祉士、Sさんの遺体が発見された。遺体は浴槽にうつ伏せの状態で浮かんでおり、 Sさんの勤務先から「いつも始業の45分前には出勤してくるのに、まだ来ない」と通報を受け、府警東住吉署員が発見した。 玄関は施錠され、室内に荒らされた形跡もなかった。遺体に目立った外傷はなく、室内に不自然な点も見当たらなかったが、 詳細に調べると、首に締められたような痕がうっすらと残っていた。
 大阪府警は殺人事件として捜査を開始。同日夕方、交友関係から判明した水内容疑者を府警本部に呼び、事情を尋ねたが、 水内は何食わぬ顔で「Sさんのことは知っています。でも、殺されたなんて知りません」と答えた。
 しかし、マンションの防犯カメラを確認したところ、2015年1月25日午前7時45分ごろ、 顔を隠すように黒いフードとマスクをした男がマンションを訪れ、エレベータに乗り込んだ。 午前8時45分ごろには、非常階段を使って階下に降りてきた男がマンション入り口を通過する様子が記録されていた。 この男の姿形が水内に酷似しており、水内がその時間帯に外出していた事が判明した。
 大阪府警が水内を重要参考人として再度事情聴取すると、水内は「私がやりました。ベルトで首を絞めて殺しました」と 供述を一変させ、犯行を自供した。  


出会いと裏切り
 もともと山形県に住んでいるSさんと水内との出会いは、水内が大阪府警から東日本大震災の被災地支援で宮城県警に出向し、そこで開催された 街コンで知り合い交際を始めた。交際は2013年春頃から始まっていたが、その時既に水内にはSさんとは別に交際している女性がいた。その女性と 2014年8月に結婚。水内はは結婚をしてた事を隠しSさんと付き合っていたが、自身のツイッターに結婚式の写真を掲載した事により 結婚が発覚してしまう。
 結婚発覚後、Sさんは昨年末までに少なくとも3度、水内容疑者に別れを切り出した。そのたびに水内は 「別れない。おまえはおれのことが好きやからどうせ別れられへんやろ」と言い放ったという。


計画的犯行
 水内は取り調べで別れ話を切り出したら、関係を『奥さんや警察に言う』と言われ、カッとなってやった」と供述している。 しかし、事件直後、阿倍野署に戻り、道場で剣道のけいこに汗を流していた水内。凶器のベルトを道場の隅にあったごみ袋に捨てると、 同僚らと昼食に出かけていた。このベルトは、ズボンにつけていたものではなく、かばんに入ってたものだったという。  あらかじめ凶器を用意した計画的犯行との見方が浮上し、さらにベルトを捨てたのは証拠隠滅行為ともとれる。 「別れ話でカッとなって」と衝動的犯行を示唆する水内の供述には不審点が残る。


裁判
 2015年9月29日に水内の初公判が開かれた。水内は裁判で犯行内容をすべて認め遺族に謝罪をしたが、真摯に反省をしているかは 疑問が残る。

 公判では警察官当時の不適切な女性遍歴が次々と明らかにされた。妻と結婚する前後に、被害者のSさんを含めて7人と交際。 Sさんに既婚者であることが露見した後も、新たに別の女性と付き合い始めるなど検察側は被告のゆがんだ女性観を指弾していた。  水内は「Sさんはその他の(女性の)中の1人。大切に付き合おうという気持ちはなかったし、自然消滅すると思っていた」と 被告人質問で淡々と答えた。「自分より下の立場にある女性」(論告)とみていたのに、刃向かわれたことで怒りを爆発させたという。

 検察は水内に懲役20年を求刑。10月6日、水内に懲役18年の刑が下った。(大阪地裁)





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